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多様なフィールドで活動するキャリアを目指して

古里緑

フリーランス/パーソナルトレーナー

CSCS

これからストレングス&コンディショニング(S&C)コーチを目指すという方へ。資格は取ったけど、どうやってキャリアを築いたらいいかわからない、という方へ。先人たちから、キャリアづくりのアドバイスをお届けします。

第2回は古里緑(ふるさとみどり)さんです。

【Profile】

専門学校卒業後、業界店舗数トップのストレッチ専門店に入社。入社2年目には最年少でわずか数名の選抜トレーナーに選出され、スペイン留学を経験。フリーランスに転向後は、草野球大会公式トレーナー、プロ野球チームの春季キャンプや自主トレに帯同、テレビ番組内のスポーツ企画への出演、一般の方へのパーソナルトレーニング、企業の出張トレーニングなど多岐に活躍。福岡県生まれ、熊本県育ち、東京都在住。NSCA-CPT。

キャリアのスタートは会社員トレーナー

私からは「多様なフィールドで活動するキャリアを目指して」というテーマでお話しします。私はトレーナーの専門学校の出身で、在学中にNSCA-CPTの資格を取得しました。資格取得してからまもなく10年になります。卒業後は会社員として業界最大手のストレッチ専門店に就職して、4年間トレーナーとして働きました。

ストレッチ専門店に就職したのは理由があります。九州出身の私はもともと福岡ソフトバンクホークスが大好きで、いつかホークスで仕事がしたいと考えていました。もちろん選手やコーチにはなれないので、どんな道があるのか模索した中で、トレーナーだったら可能性があるんじゃないか?と考えたのです。

キャリアをスタートする上でいちばんに考えたのは、「スポーツの現場で活躍する上で、女性トレーナーとしての強みが欲しい」ということでした。そこで、店舗数がいちばん多いストレッチ専門店に入社して、結果を出すと決めたんです。「周囲が認めざるを得ないくらいの実績をあげる」。そう考えてがむしゃらに頑張りました。

おかげさまで、入社年度から新人賞と個人優秀賞をW受賞できたのですが、創業以来初めのことだったそうです。入社2年目には、1000人以上の社員の中からわずか数名の選抜トレーナーに最年少(21歳)で選抜され、会社からスペインに留学させてもらえました。この会社での経験がキャリアの基礎になったのは間違いありません。

フリーランスとして独立

4年後には独立して個人事業主(フリーランス)になりました。今年で6年目になります。まずはパーソナルトレーナーとして一般の方向けにトレーニングやストレッチを提供しながら、ストレッチ専門店の技術顧問に就任し、オープンから2年間にわたって、新人研修やサービス・プログラムの開発をサポートしました。その間、自分の強みである「パートナーストレッチ」のテキストを監修しました。

同時期に、GRIT NATION(グリットネーション)という渋谷にあるファンクショナルトレーニングのスタジオでもパフォーマンスコーチとしての活動を始めました。その後フリーランスのまま、コーチ兼スタジオマネージャーに就任しました。一人のフリーランスでは体験できないようなクライアントさんとの出会いや、自分ひとりではできない仕事(大企業のオフィスに出張して社員さんにトレーニングを提供したり、地方でのウォーキングイベントのリード役など)ができることが魅力で、この仕事はいまも私の柱のひとつになっています。

スポーツ現場での活動としては、関東を中心とした草野球リーグであるVictoria League

の「公式トレーナー」もやっています。実は1000を超えるチームが参加する大きな大会で、毎回いろんなチームにお邪魔してウォーミングアップやクールダウンをお手伝いしたり、トレーニングメニューを提供しています。毎回毎回が一期一会の機会であり、とても楽しく仕事をさせてもらっています。

以前は「スポーツ畑に出て行くための強みをつくる」ことが自分の目的だったのですが、ここ数年は「トレーナーができることって、こんなに幅が広いんだ」と実感しています。それは自分にとってうれしい発見でした。最近は専門学校の非常勤講師として授業やセミナーを担当しながら、トレーナーのタマゴたちに、スキルやテクニックだけでなく、この仕事の魅力を伝える活動もはじめています。

フットワークの軽さが自分の強み

たくさんの場数を経験してきた私ですが、独立したばかりの頃は「この仕事は自分の夢であるプロ野球に直結するのか?」と、そればかりを考えてしまいがちでした。でも、いつの頃からか、その発想が自分の可能性を狭めてしまっているのではないか?と思うようになりました。

自分にできることはもっとあるんじゃないか?コンディショニングが必要な人に私の持っているものを伝えられる機会はもっとあるんじゃないか?そんなふうに頭を切り替えてからは、いただいたオファーにできる限り挑戦していくことにしました。

その結果、テレビのバラエティ番組に帯同したり、女子ラクロス選手向けのトレーニングキャンプに呼ばれてコーチをしたりと、どんどんと仕事の幅が広がりました。今ではこのフットワークの軽さこそが自分の強みだと思っています。

それぞれの時代に大切にしてきた言葉

学生時代、会社員時代、そして今の個人事業主の時代。私にはそれぞれの時代ごとに、大切にしてきた思いがあります。学生時代は「自分の感性を知る」ことを大切にしていました。自分は何が好きで何が嫌いか。何が得意で何が苦手か。自分と向き合って、自分の中で感じていることを大事にしながら、人に会ったり、施設見学に行ったりするようにしていました。

会社員トレーナーをしているときは、どうしても視線が組織の中に向きがちでした。社内でトップを取ったらそれで満足してしまう。でも、それでは外の世界で通じるトレーナーにはなれない。そう考えて「井の中の蛙、大海を知らず」という言葉を常に自分に言い聞かせていました。また、ことわざのアレンジである、「二兎を追う者しか、二兎は得られない」という言葉を大事にしていました。貪欲に追いかけた者にしか手にできないものがある、という意味です。そんな気持ちで社内外のいろんなプロジェクトに挑戦していました。

個人事業主になってから大事にしてきた言葉は、「やらないことを決める」です。すべてのオファーに応えたい気持ちをグッと抑えて、限りある時間の中で優先順位を決めること。そういう意思決定を繰り返すことで、ただ「やる」のではなく、覚悟を持って仕事ができるようになりました。それがすごく良かったと思っています。フリーランスには、全決定権が自分にあるが故の難しさがある。だからこそ、自分らしい軸を持つことが大切だと思います。

「思い出してもらう」、そのためにできること

「多様なキャリアで成功する上でのアドバイスを話してください」とオファーされて、今日この場に立っているわけですが、まだ自分ではとても成功だなんて思っていません。けれど、せっかくの機会なので自分なりにここまで来ることができた理由を考えてみました。すると、ひとつ思い当たることがありました。

それは、「思い出してもらえた」から。この一言につきます。もちろん、ラッキーなことがたくさんあったのですが、実はちょっとだけ戦略的だった部分もありました。

まずひとつは「わかりやすい実績をつくる」こと。業界最大手のストレッチ店にいて、そこで最年少の選抜メンバーだった。スペインに留学した。プロ野球選手の自主トレに帯同した。全国の治療院やフィットネス施設、専門学校で講師をしている。こういった実績は「あの人だよね」って思い出してもらうのにとても効果的です。

次に、「人に紹介できるだけの信頼を積み上げる」ことです。挨拶ができる。コミュニケーションがきちんと取れる。不誠実なドタキャンをしない。そんな当たり前のことを10年間積み重ねてきたことで積み上がった信頼こそが、私の財産なんです。

そして最後に、「希少価値を高める」ことです。フットワークが軽いこと。資格を持っていること。あえて言えば20代の女性トレーナーであること。これも希少性の一つかもしれません。ある人が言った「優れるな、異なれ」と言う言葉があります。上には上がいくらでもいます。それを追いかけてもキリがない。人と異なっている点こそが、キャリアづくりの原点になる、と私は思っています。

ありがとうございました。

2023年12月17日「NSCAジャパン S&Cカンファレンス2023」ライブキャリアインタビューより